ラブコメ

894名無し戦隊ナノレンジャー!2021/05/01(土) 00:06:30.60
「やべぇれむ!もうこんな時間れむか?遅刻するれむ~~~!!」
誰もが振り向くようなとんでもない美少女が一人、胸に死にかけのマンボウを抱きかかえ通学路を走っていた。
(遅刻なんてしたられむの優等生イメージが壊れむ。そんなの絶対ダメれむ。)
そのうち、息を切らせて走る娘のたわわな乳房に挟まれ、圧死寸前のマンボウはブクブクと口から泡を吹いた。
走る少女は白く燃えるように広がる泡に視界を塞がれパイスラ状態。
(れむ!前が!?)

「うわっ!」
「れむは!」
前の見えないれむちゃは曲がり角で人にぶつかってしまった。学ラン姿の男子生徒だった。
そのままあれがああして相手の青年がれむちゃに覆いかぶさる形に。青年の鼻腔にれむちゃの魚臭い息がかかる。
「イテテ、な、なにするんれむか。」
「そっちがぶつかってきたんじゃないですか。」
青年は語気を荒げるが、声が酒焼けした女の子みたいでいまいち迫力がない。
「そうじゃなくて、れむちゃはこのおててのことを言ってるれむ」そういって少女は意地悪そうな笑みを浮かべ、指を青年の手首に絡める。言われて手を見ると、自分の手が少女の豊かな胸にあてがわれているのに青年は今更気づいた。
手のひらに広がる柔らかく、深い、砂丘の熱。
どくどくと波打つ彼女の心臓の鼓動が伝う。
「あっ、ごっ、ごめんなさい!」
そういうと、青年は顔を赤らめて、れむちゃから逃げるように走り去った。


895名無し戦隊ナノレンジャー!2021/05/01(土) 00:07:33.08
「突然だが転校生を紹介する。」先生の唐突な言葉に教室がざわめく。
こんな枯れ果てた辺境の学校に今更だれが入ってくるというのか。

(あれは!)
「こかこいと言います。よろしくお願いします、ごめんなさい。」
青年は黒板に珍妙な四字熟語が並べながらそう自己紹介した。
(あいつ!、今朝の奴れむ!)
先生に促されてこかこいはれむちゃの隣に座ることになった。
「あなたがあの有名なれむっふさんだったんですね。さっきはごめんなさい。あの、れむちゃって呼んでも良いですか。」
「そんなの駄目れむ、れむちゃって呼んで良いのはれむちゃだけれむ!」

「じゃあ、せめてれむさん、って呼ばせてください」

896名無し戦隊ナノレンジャー!2021/05/01(土) 00:07:52.42
転入して数ヶ月も経つと青年はクラスにすっかり打ち解けた。
「あのこかこいくん、ってこ?結構良いよね。最初は地味かと思ったけど、他のクラスの男子と違って真面目だし声もかわいいしさ」

「ど゙わぁっ、お前そんなに俺のを吸うんじゃねえよ。あぁああぁあ!いく、イキます!」
「うぼ!うぼっ!」ジュっ!ジュっ!

「しりりくんまたマンボウであんなことして馬鹿みたい。ダッサ。何であんなのが格好良いって思ってたんだろ。
その点、こかこいくんは何ていうか、清潔感があるじゃない」

(前はみんなしりりくん面白い、って笑ってくれたのに、どうしたんだ皆?)
転入生の登場は、クラスの人間関係に新たな風を吹き込み、特にその煽りを受けたのがしりりだった。彼はかつての人気者の座を奪われてしまった。
それにしりりにはもう一つ気がかりなことがあった。例の転入生には自分を避けている節があるのだ。他の誰にでもしていたように最初はこの新入生に何度か適当に冗談交じりに話しかけていたのだが、そのたび適当な生返事をされ目を合わせてさえくれない。

しりりを取り巻く状況の変化はれむちゃもまた感じており、彼女は小さい頃から知り合っていた仲だけにしりりに対して少し同情した。
(しりりくん、ちょっとかわいそうれむね。みんなあいつに騙されてるれむよ。れむはあいつが腹黒だってわかってるれむ。)

そんなことを考えていたれむちゃにこかこいが声を掛ける。
「れむさん、ちょっとMAD制作で行き詰まってて、、れむさんのMAD、技術とかすごいですよね。僕前からかっこいいなって思ってて。少し教えてもらってもいいですか?」
「…..ま、まあちょっとくらいは教えてやっても構わないれむよ?」
思うところがないではないものの、自分の動画や技術のことを褒められると、やっぱり嬉しくなって、顔の端がほころんでしまうのだった。


897名無し戦隊ナノレンジャー!2021/05/01(土) 00:08:29.96
秋、文化祭の季節、
後夜祭のダンスパーティで合作を出したカップルは永遠に結ばれるという伝説がある。この季節になるとそのために学校は恋を語らう学生たちで急に華やぐ。教室を少し見回しても、南米風の青年と胸の大きな年上のお姉さん、使用済みのゴム製品と渋顔の魚類、留年した神経質な映画フリークとその横で「そうですね」とそのトークを聞く少女、怒ったムロツヨシとすまし顔でエッチな絵を描くムッツリ優等生、府知事とぼんやり顔で虚空を見つめる化け物といった面々が甘々な青春ラブストーリーを展開していた。

こかこいの周りには女子たちが複数人集まっていた。
「あ、あのこ、こかこいさん、わ、わたしと合作してくだパイ」
丁度、一人のオッドアイと銀髪が特徴的な少女が股を濡らしながら勇気を振り絞ってそうこかこいに尋ねた。
しかしそのように女子たちは順々にこかこいに合作を申し込むのだが、こかこいは、「ごめんなさい」と、すげなく機械的に彼女らの申し出を断るのだった。

そんな様子をれむは、席で本を読むふりをしながら、聞き耳を立てて伺っていた。
(とうぜんれむ、誰が右も左もわからなかったこかちゃに教えてきたと思っているれむ。)

放課後、いつものようにこかこいに音MAD制作を教えるれむっふは、折を見てそれとなく口を開いた。
「も、もし合作の相手が見つからないんだったら、特別れむちゃが一緒に作ってやってもいいんれむけど (チラッ」
「ありがとうございます。でも、ぼく、実は合作したい相手がいるんです。それに、れむさんには、ぼくなんかじゃなくて、もっと素敵な人が似合っていると思います」
れむちゃは怒りと恥ずかしさで赤面してパイスラ状態。
――せーっかくこっちから申し出てやったのに!れむを差し置いて一体誰と合作するつもりれむかぁ!(レムムムム
目を潤ませて顔を真っ赤にしながら、彼女はそのまま無言で荷物をまとめて帰ろうとしたので、こかこいはなんとか彼女をなだめた。


898名無し戦隊ナノレンジャー!2021/05/01(土) 00:15:31.12
文化祭の準備が進み教室が活気たつなか、しりりは頭を抱えていた。
(なんでだ、この前までみんな俺と合作してえしてえ、って俺の周りでケツ振って回ってたのによ。こかこいとかいうバタくっせえガキがなんだっちゅうんだ。あいつの動画なんて大して独創性も面白みもねえじゃねえか。たしかに声はちょっとかわいいかもしれねぇけど、いちご姉貴ほどじゃねぇしよ。)
注目を浴びることになれていた彼にとって周囲の無関心はつらいものだった。

こかこいがそんな風に悶々とするしりりに消えそうな声でそっと耳打ちした。
「しりりさん、今日の放課後、話があるんです。」



「なんだよ話って、」
「しりりさん、ぼくと合作、してくれませんか?」
「は?」
「本当は、ぼく、しりりさんにずっと憧れてて。ぼく、前は何かに本気でうちこむこととか、何かに本気で感動することとかなくて。でもある日、しりりさんの上げたボイスドラマ見たら、ぼく、すごい感動して。何故だかきんたまがすごい熱くなって。しりり最強、しりり最強、ってそう思ったんです…….それでしりりさんに少しでも近づきたい、って思って、この学校まで来て、MADについてもれむさんにお願いして色々勉強して。」
「ど゙わぁ。でもお前、クラスで俺のこと避けてたじゃんよ!」
「だってそれは、(しりりさんの前に来ると頭が真っ白になっちゃうんです、なんて…)」
「とにかく、ぼく、しりりさんと合作したいんです。一度だけでいいんです。一回だけの関係で、終わったらすぐ捨ててください。責任なんて取らなくていいんです。ぼくのこと、どう思ってていても構わないです。それでも、一度でいいからっ!」
興奮して目元を熱くさせ、舌を震わせながら一気にしりりに詰め寄るこかこい。
(なんかこいつの髪の毛、良い匂いがすんな。女の子みたいな…)
リキュールのように甘ったるく、柔らかい香りと酒焼け声に頭が痺れて「据え膳食わぬは男の恥」そんな言葉が脳裏を明滅した。


899名無し戦隊ナノレンジャー!2021/05/01(土) 00:16:29.24
「…..それで、結局どうしたんれむか?」二人の学生が道を歩き、それを夕日が照らしている。
「…..断ったよ。」
「えーマジれむかwww。勿体無いれむねぇ。れむはともかく、女子はみんなみんなこかこいくんのことねらってたんれむよぉ?......なんで断ったんれむか?」
「なぁ、れむちゃ」
「?」
「文化祭、俺と合作しようぜ」
「…またれむかぁ?去年しりりくんとはやったれむよ。しりりくんも他の人とも交流した方が良いと….」
「俺はお前と以外合作するつもりないんだ」
「も、もぉ~!.....///」
夕焼けが映し出す二人のシルエットはいつしか一つになり赤い光のなかに軽やかに溶けていった。










しかし、光が影を照らした時、影に隠れた本当の暗黒が初めて明瞭に見えるようになるのだ。二人の後ろでそれまで影に隠れていた真っ黒い鎧が眩しい光のもとに現れた。全てを呪うような禍々しい暗闇が黒々と塗られた顔で鎧の懐に手を入れると、カチリとオルファの刃が伸びる音が夕暮れの街に響いた。


あれから

915名無し戦隊ナノレンジャー!2023/02/02(木) 01:04:48.96
もうずっと学園の事なんて忘れてた
今の生活は忙しいけど満足してる
当時派手だった髪も今は面影がないくらい落ち着いてる
あの頃は楽しかった
れむっちは寿司職人になったらしい
風の噂でそう聞いた
学生時代熱中してた音弄りはどうしたのかな
『見ろ!…み、みようね!』って言って手に握りしめてたmp4は汗でベタベタだったよね
はま寿司はよく行ってたけど職人になるほど好きだったんだね
…しりり君は知ってたのかな
2人が駆け落ちしたって聞いた時はホントびっくりしたよ
いまどこにいるのかわからないけど会えるならお寿司握って欲しいなぁ
今でも見てるよ れむっちのmad
あーあ、酢飯臭いCubaseでこんなのが作ってたんだなぁ
あの当時はそんなに興味なかったから知らなかったよ
もう卒業から5年も経ったんだね
たまには連絡とかしてほしいな
多分貴方から見た私は取り巻きAでしかなかったと思うけど
私はremmuhとの日常、なんだかんだで楽しかったよ!


怪文書/学園短編集3.txt · 最終更新: 2023/06/06 18:14 by moerutoukon
Driven by DokuWiki Recent changes RSS feed Valid CSS Valid XHTML 1.0