こかこい姉貴

869名無し戦隊ナノレンジャー!2020/03/21(土) 13:31:59.04»884
――――深淵が鎧を脱いだ

その噂は瞬く間に全校生徒の間へ広まり、制服姿の深淵は教室で自分の席に着いてからも
他の生徒たちから向けられる好奇の目を逃れることはできなかった

男子生徒たちが囁き合う声が聞こえる
(ガリッガリに痩せてるけど妙にエロい体してんだよなぁ)
(さっき通り過ぎたときめっちゃいい匂いした)

女子生徒たちの声も聞こえてくる
(何あれ?露出増やして男の目ェ惹きたいってバレバレ)
(これだから構ってちゃん丸出しのメンヘラは……w)

聞こえないふりをしてうつむいた深淵のひざの上でギュッと固めたこぶしが小刻みに震える
(しりりくん……私、やっぱりこわい!)

さらに追い討ちをかけるように噂を聞きつけたれむっふの元取り巻きたちが深淵を取り囲む
「あれェ?深淵じゃん。お前どのツラ下げて戻ってきてんの?」
「鎧脱いでるけどれむっふさんが居なくなってもうイジメられないと思った?甘ェんだよお前。」
「コイツこれで意外と男に人気あってムカつくんだよ」
「ここで剥いちまうか。『深ちゃ』とか言ってる陰キャだって喜ぶだろうしwオラッこっち来いよ。」

ささやかな抵抗もむなしく上位カースト女子たちにより席を立たされ羽交い絞めとなった深淵
「はい男子たち注目ゥ!さァて今日の『深ちゃ』はどんなおパンツ履いてるのかなァ?」
取り巻き女子Aの手がゆっくりと焦らすように深淵のスカートの裾をつまみ上げていくに連れ
その眩しいほどに白く滑らかな腿が、
固唾を呑んで事の成り行きを見届けようとする男子たちの前であらわにされていく――――。

こんなとき、いつも助けてくれたしりりはもういない……分かっていても心の声で叫んでしまう
(しりりくん……たすけて!)


870名無し戦隊ナノレンジャー!2020/03/21(土) 13:32:21.01
「楽しそうだねェ~……で、何やってんのアンタたち?(低音)」
ドスの効いた酒焼け声が響き渡り、生徒達の視線が教室の入り口に佇んだ声の主に集まる
(やっべェ……こかこい姉貴じゃん)
(こかこいってあの……去年120本動画投稿したあの”こかこい”!?)
教室内が一斉にざわめき始める

深淵を拘束した上位カースト女子たちに向かって悠然と歩を進めるこかこい
その迫力に気圧されて一斉に深淵から離れて身を退く女子たち
「へえ、アンタが”深淵”か……名前は知ってるよ」
その場にへたり込んだ深淵の上にかがみ込み、顎に指をかけてクイッと顔を上げさせた後、
まるで吟味するかのようにじっくりと眺める

「……ふぅん。さすがにあの”しりりくん”をたらし込んだだけあってかわいい顔してんじゃん」
サッと頬を赤らめて顔を背ける深淵
「その反応、気に入らないね。こんな私だけど”しりりくん”にはちょっとだけ憧れてたからさ」
「でも、もっと気に入らないのは……お前らのほうだよ!」
上位カースト女子達のほうを振り向いて声を荒げるこかこい
「どうせお前らイキり無産だろ?さっさと家に帰ってAviUtlと拡張編集インストールしてなよ。」
恐れをなして逃げ出す女子達に向かってさらに追い討ちをかけることも忘れない
「そうそう、『死相姉貴素材全集』のダウンロードも忘れるんじゃないよ!」

「で、さぁ……”深淵”だっけ?アンタたしか2.5D素材とか作るの得意だったよね?」
「死相姉貴のBB素材ってまだまだ足りないんだよね……どう?アンタ作ってみる気ない?」
「無理にとは言わないよ。じゃあね。」

(なんて強くて自分勝手な人なんだろう、まるで……まるで)
立ち去ったこかこいに在りし日のしりりの面影が重なることに戸惑いを隠せない深淵だった


880名無し戦隊ナノレンジャー!2020/03/21(土) 16:55:17.30
アリパイが「こかこいさんのこと一番好きなのは私なのに…ッ!」って嫉妬しそう


885名無し戦隊ナノレンジャー!2020/03/21(土) 20:38:04.22>>886
昼休み――――。

人気のない体育館の裏でコンクリートの屋外たたきに一人腰掛け、食後の一服を楽しもうと
愛用のジッポを取り出したこかこいに一人の女子生徒が駆け寄る
「あの、今朝のこと聞きました……。」
行儀よくスカートの裾を敷きこみながら隣に座る女子生徒

「どうして、深淵なんかのこと助けたんですか?」
女子生徒を一瞥した後、その問いには答えず咥えたタバコに火を着けるこかこい
昼休みの喧騒を遠くに聞きながら、ジッポの蓋を閉じる音だけがやけに大きく響く気がした

胸の奥まで深く吸い込んだ煙をゆっくりと吐きながらポツリと呟く
「ねえ、アリパイの『パイ』って何なの。」
「……私は、そんな呼び方イヤだからやめてって言ってるんです。それなのに……あッ!」
女子生徒に向かってスッと伸びたこかこいの左手がその胸にあてがわれる

反射的に身を引いて両腕で胸を隠す仕草をした女子生徒の慌てぶりに苦笑するこかこい
「ハァ……お前、マジ何なの。私が誰を助けようがアンタには関係ないでしょ。」
「私はただ、こかこいさんのことが……」
「あれ以来ずっとまとわり付きやがって。また私にボコられたいの?……そういう趣味?」
「そんな、違ッ……!」
タバコをもみ消したこかこいが女子生徒をその場に押し倒す

観念したようにギュッと目を閉じ、次に起こる何かを待ち受けて身をこわばらせる女子生徒
「……って、バーカw。ちょっとからかってみただけ。本当にバカマンコだね『アリパイ』は。」
「~~~ッ!///」

顔を赤らめて上体を起こしたアリパイの目には立ち去るこかこいの後ろ姿だけが映っていた
「……。早く家に帰って履き換えなきゃ……(使命感)」


にすの餌

571名無し戦隊ナノレンジャー!2020/04/12(日) 15:00:52.36
放課後――――。
他の生徒たちが帰った後、足音を忍ばせながら教室に入る一人の女子生徒
巨大な水槽に向かってひっそりと歩み寄り、水槽に架けられた梯子を上って
スカートのポケットから一枚のビニール袋(マチ付きキッチン用)を取り出した

水面に広がったビニール袋を追うように浮上したマンボウがそれを吸い込む

女子生徒はその後に起こることを見届けることなく梯子を下りて教室を出た

翌朝、水面に身を横たえて浮かぶマンボウの死骸が最初に登校した生徒に
発見され、ちょっとした騒ぎが持ち上がる
「あれ。にすのやつ、また死んでんじゃん」
「ムダにデカくて重いし、片付けるの誰だと思ってんだよ」
「そりゃ今週のにすくん係でしょ」
「あー。で、今週って誰の当番だっけ?」
「……あっ。」

生徒たちの目線の先には、登校して席に着いたばかりの深淵の姿があった
静まり返る教室
(え、何……?)
周りから自分に向けられる視線に気付いてキョロキョロと辺りを見回す深淵

ヒソヒソと囁く声が聞こえてくる
(今週のにすくん係って深淵だよね?あの子ってさ、ほら…前にも)
(あー、何も食べてなくて一回にす食べようとしたって話?聞いたことあるな)
(そこまで言ってないけどさwでも、にすくんのエサってイカとかエビでしょ?)
(横取りされてにすは餓死、か……)

「違うッ!私……そんなことしてない!」
ガタッと大きな音を立てて立ち上がった深淵、一斉に押し黙る他の生徒たち

(最近ずっと雨水とホコリしか口にしてないのは本当だけど……
にすくんにあげるとき、イカやエビを見て『おいしそうだな…』って思ったのも
本当だけど……)
「でも私、本当に……そんなことしてない!」
深淵の悲痛な叫びだけが静まりかえった教室に響き渡る――――。


572名無し戦隊ナノレンジャー!2020/04/12(日) 15:01:16.99
(ふふ、いい気味。私のこかこいさんに色目を使ったりするからこうなるのよ)
教室の入り口から深淵の苦境を覗き込みながらほくそ笑む女子生徒

「アンタ、何か知ってるね?ちょっと話を聞こうか。」
「……ッ!」
背後から肩を掴まれ、ぐいッと引き寄せられた女子生徒はバランスを崩して
思わず声の主のほうに倒れ込み、意図せずその胸に身を預ける形となった

それが誰かはもう分かっている、忘れようとも忘れようのない酒焼け声……
それでもおずおずと顔を上げて声の主をその目で確かめずにはいられない
「こかこい、さん……。」

教室に入るなり無言のまま水槽に歩み寄り、梯子を上がってマンボウの口に
肘まで手を突っ込むこかこいに唖然とする生徒たち
ややあって、マンボウの口から取り出されたその手には一枚のビニール袋が
握られていた
「今回のにすの死因はこれだよ。」
「マンボウはイカやエビのほかにクラゲなんかも食べる。
ビニール袋をクラゲと間違えて喉を詰まらせただけのことで深淵は関係ない」
その言葉を裏付けるかのように息を吹き返したにすが「んぼっ、んぼぉ!」と
水しぶきを上げて水面を跳ね回る

「あ、あの……ありがとうございます。でも、どうしてにすくんの死因が……?」
「そんなこといいって。それより前に話した死相姉貴素材の話、考えておいて。」
深淵はその後ろ姿が見えなくなってからもしばらくの間、教室の外に向かって
心の中で感謝の言葉を繰り返していたという――――。

教室から出たこかこいに駆け寄る女子生徒
「ごめんなパイ……。」
「アンタさァ、それで許されると思ってるわけ?ちょっと体育館裏までツラ貸しな」
おしおきの期待に胸を膨らませて早くもおパンツをしっとりさせるアリパイだった


アリパイの逆襲

797名無し戦隊ナノレンジャー!2020/04/17(金) 19:02:07.37
昼休み、体育館裏に並んで腰掛けるこかこいと女子生徒

「ここは静かですねー。」
「……。」
「私、こかこいさんの声すきなんですよ。」
「……それ、前にも聞いたよ。何回おんなじこと言うの。」
「あれ、そうでしたっけ?……そうそう、新しいボイドラ聴きましたよ。」
「……。」
「あれ演ってくださいよ。『いらっしゃいませ~ちゅんちゅ~ん』って。」
「……!」
「こかこいさん、あんなかわいい声も出せるんですねー意外でした。」
「アンタ、あんまり調子に乗ってると……ッ!」

女子生徒の胸ぐらを掴んで凄むこかこい
「でも私やっぱり……いつものこかこいさんの声のほうがすきです。」
女子生徒は落ち着いた様子で真っ直ぐにこかこいの目を見つめ返し
さっきまでとは打って変わって真面目なトーンで囁いた

「こ、このバカ……バカマンコ!いきなりなに言い出してんのッ!///」
女子生徒を突き飛ばすようにして立ち上がり、その場を去るこかこい
突き倒された上体を両手で支えて、ゆっくりと起き上がりながら、
遠ざかっていくこかこいの後姿を潤んだ目で見つめ続ける女子生徒

(こかこいさんって、やっぱり……かわいい!)
そう心の声で呟きながら目を細めて、ニィッっと口の端を吊り上げた
アリパイのおパンツは、しっとりというか最早そんな段階を通り越して
大変なことになっていたという――――。


消えたこかこい

昼休み――――。
息せき切って教室に駆け込んできた別のクラスの女子生徒が教室内を見渡す
……が、そこにお目当てだった彼女の姿はない
「え、と……あの、こかこいさんは?」
一斉に教室の入り口から目を逸らして、うつむいたまま押し黙るクラスメイトたち
ややあってその中の一人がようやく重い沈黙を破り女子生徒に事情を説明する

(放課後に体育館の裏で他の女子生徒と学園の生徒としてふさわしくない行為を
行っている場面を見た生徒からの通報があり、こかこい本人に問い質したところ
『すべての責任は自分にある』と認め、自主退学に応じた――――。)

・・・

説明を聞き進むに連れ、女子生徒の顔から血の気が引いていく
(こかこいさんには前にちょっと胸を触られたくらいで、まだそんな関係には……)

ハッと気を取り止め顔を上げた女子生徒が何かに気付いたように、教室の隅に
設置された巨大な水槽に駆け寄って声を荒げる
「あなた、こかこいさんと仲良かったよね!?こかこいさんはどこへ行ったの!?」
しかしその質問の相手は所詮マンボウ
普段通り虚ろな目をして水槽の中を浮いたり沈んだり緩慢な動作を繰り返すだけ

「もういい!この……役立たずのバックレエロマンボウ!サーモスタットが壊れて
適正な水温を保てなくなって死んじゃえばいいのに!」
水槽の前に泣き崩れる女子生徒

見かねて立ち上がった深淵が席を立ち、女子生徒の背後に歩み寄る
愛する人に別れの言葉の一つもなく去られた者の悲しみは誰よりもよく知っている
だが、今の彼女にかけるべき言葉が見つからない

「あなたなんかに何が分かるって言うの!?」
深淵が無言で差し伸べた手を振り払い、立ち上がった女子生徒が教室を駆け出す
溢れる涙を拭いつつ、廊下を駆けるアリパイのおパンツは乾いたままだったという


姫プに物申すアリパイ

712名無し戦隊ナノレンジャー!2020/08/10(月) 23:05:26.73
放課後――――。
にすの餌やりを終えて教室を出た深淵は突然廊下で一人の女子生徒に声を掛けられた
「話があります。少しお時間をいただけませんか。」
いつからそこで待っていたのかは分からない……が、その声からは悲愴な決意のような
ものがひしひしと感じられる
面識はないがその雰囲気かられむっふの取り巻きではないことだけは見て取れた
返答に窮している深淵の様子に気付いた女子生徒が言葉を続ける
「こかこいさんのことです。……あなた、最近死相姉貴素材を静画に投稿しましたよね?」
(関係ないとは言わせない)
女子生徒の細められた目と吊り上がる口角が次に続く言葉を無言のうちに物語っていた

・・・・・・

深夜の町、それもいかがわしい界隈に向かって決然たる足取りで歩を進める女子生徒
目的の店の前に立ち止まり、大きく深呼吸をしてから意を決して勢いよくドアを開ける
「こかこいさん!」
店内にギッシリとひしめく男たちの視線が入口に立つ女子生徒に向かって一斉に集まる
その男たちの輪の中心に女王然として君臨するこかこいの姿を認めた女子生徒は
思わず声を荒げてしまう
「なにをやってるんですか!あなたは!」

「なにって、”姫プ”だけど?」
空になったグラスにモーツァルトを注ごうとする囲いを手で制止しながら立ち上がるこかこい
入口の女子生徒に向かってツカツカと歩み寄ると、男たちはその向かう先を妨げることなく
次々と左右に分かれて道を空けていく
「久しぶりだね。私が学校(崇拝スレ)追い出されてもうけっこう経つし。どう元気にしてる?」
女子生徒の慎ましやかな胸に手を伸ばすこかこい
その手を叩き落とすように払いのけてキッと相手の顔を睨みつける女子生徒
「へえ、アンタもずいぶん偉くなったもんだね。いいところのお嬢さんはもう私相手なんかじゃ
”しっとり”しないってワケ?」


713名無し戦隊ナノレンジャー!2020/08/10(月) 23:05:51.72
下卑た笑みを浮かべたこかこいが酒臭い息を吐きかけながらガチ恋距離で女子生徒に迫る
「そんな、私はただ……こかこいさんのことが……あっ!」
間髪を入れず女子生徒のスカートの中に手を潜り込ませたこかこいが下着をひと撫でして
取り出したその濡れた指先を相手の眼前に突きつける
「これは、何かな?……やっぱり”アリパイ”は『バカまんこ』だね。」
「!」
サッと頬を紅潮させたアリパイが振り上げた手は即座に周りの囲いたちによって捻り上げられ
こかこいの頬に振り下ろすことは叶わなかった

・・・・・・

「さあそれでは!ここでコイツを競りたいと思うんですよ!」
拘束されたアリパイの脇に立ち、自身の囲いたちに向かって酒焼け声を張り上げるこかこい
「まず30万から!さぁお客さんどうぞ!」
野太い男たちの声によりどんどん釣り上がっていく価格に怯えるアリパイの耳元に口を寄せ
こかこいが持ち前のクッソ低い声でささやく
「なんでか知らないけどアンタ最近コイツらに人気あんだよね、私としちゃ面白くないけどさ。」

(アリパイかわいくなったよな)
(V行ったらこかちゃ捨ててでも囲うわ)
(「しっとり」って何?)

ボソボソと聞こえてくるおぞましい言葉の数々に思わず耳を塞ぎたくなる、が手足の自由を
奪われた今のこの状態ではそれすらできない……だがアリパイはこの状況も予想していた
下校しようとする深淵を引き止めて半ば強引に交わしたあの約束――――。

「今夜こかこいさんが姫プ行為をしている現場に乗り込むつもり。それとなく周りで見張って
もし私に何かあった場合どうにかして助けを呼んで。」
「え゙えっ!……う、うん(押しに弱いタイプ)」


714名無し戦隊ナノレンジャー!2020/08/10(月) 23:06:08.36
「なんか店の周りうろついてたからこんなの拾ってきたんだけど。」
屈強なこかこいの囲いに襟首を掴まれながら申し訳なさそうに強制入店を果たした深淵の
姿を見てアリパイの最後の希望はあえなく潰えた
(バカ!役立たず!構ってちゃんのメンヘラ陰キャでセクハラ依存症のドスケベ淫乱女!)

「って深淵じゃん!」
「最近またセクハラされたくなって戻ってきたよな」
「相変わらずガリッガリのくせに妙にエロい身体つきしやがって」
一斉に色めき立つ店内の男たちを制してアリパイの側を離れたこかこいが深淵に歩み寄る

「もう”しりりくん”は『ど゙わぁ!何やってんだお前ら!』なんて助けに来ちゃくれないんだよ。」
「でも死相姉貴2.5D素材のあの約束……覚えててくれたんだ。ちょっとだけ、うれしかった。」
「……。」
しばしの沈黙の後、囲いたちのほうを振り返ってヤケクソのように声を張り上げるこかこい
「さあ!もうアリパイどころの話じゃあない!あの崇拝ブランドの『深淵』だよ!60万から!」
店内に野太い歓声が響き渡り、そして活気あふれる競りが再開された――――。

・・・・・・

深淵の尊い犠牲により無事解放されたアリパイは夜の街を家路に向かいながら一人思う
「アンタは、もう私のことなんか忘れたほうがいいよ……。」
別れ際にこかこいさんが寂しげに呟いた言葉が今も頭の中をぐるぐるしている
深淵とかいう人がいたことはもうスッパリ忘れたからあの後どうなったかも特に気にならない


マリニート復学

429名無し戦隊ナノレンジャー!2021/07/17(土) 04:43:22.26
───長期療養していたマリニートさんが復学することになりました。
「みなさん、はじめまして‥かな?」
「元気な頃はランキング動画とか‥音MADとか作ってました‥よろしく」

冗談じゃない。
5年ぶりの復学なんてそんなことあり得るのか?

「へぇ‥深淵さんって言うんだ‥」

コイツ‥キャラ被ってるんだよ。
唯一無二のメンヘラ枠
深淵にとって招かれざる客であった。

マリニートが深淵の前に歩みを進める。

空気が重い───距離が近づくたび、左腕の疼きが激しくなる。
カバンからはみ出してしまいそうな向精神薬の山‥
目の前に立たれても、顔を直視することができなかった。

「私、マリニート。よろしくね」

深淵は自分がメンヘラだと悟られまいと願った。
メンヘラは精神障害者手帳の等級、入院歴、服用している薬の種類・量
それらで競い合うことが義務付けられているのだ。

首筋には無数の赤い跡がついていた。
どうやら日常的に首吊りを繰り返しているようだ。
ブラウスに隠された左腕は、どんな状態になっているのか‥想像もつかない。

───ああ、今まで知らなかった。
メンヘラがこんなに恐ろしいものだったなんて。

"野生の獣なら、勝てない相手には挑まない。
勝ち目のない戦いに命を賭すのは、人間だけの矛盾である。"

チカラが欲しい‥
深淵は左腕の包帯をほどき、立ち向かうことを決めた。


467名無し戦隊ナノレンジャー!2021/07/19(月) 04:02:02.78
意を決して左腕の包帯を解いた深遠だったが、覚悟と裏腹に意外な結果が待ち受けていた。
メンヘラに向かって自傷痕を晒す行為は、宣戦布告そのものである。
当然、深淵がそれを知らなかったわけではない。
そんなことをすれば、時間・場所問わず、容易く悲劇の幕が開く―――そのはずであった。

「あれっ‥深淵さんって‥」
「ふふっ‥」

マリニートは柔らかい表情で語りかけた。

「女の子なんだから‥そんなことしちゃダメッ!だよ」
「お嫁にいけなくなっちゃうよ?」

先程まで感じていた重苦しい空気はなく、教室の喧騒が意識を日常へと引き戻す。
気づけば、対峙している怪物からは、微塵の敵意も感じ取れない。
―――それは、つまり。

眼中にないってことかよ!

深淵は教室の床に座り込んだまま、声にならない敵意を飲み込んで、ただ怪物から開放される時を待っていた。

「でもね、もし‥どうしても切りたくて我慢できないようだったら」

―――私が"やり方"教えてあげる。

メンヘラ枠を奪われることを恐れて噛み付いた相手は、ブラックホールのように全てを飲み込む魔性の女。
その代償は―――果たして。


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怪文書/学園微エロss3.txt · 最終更新: 2021/07/31 03:42 by serf
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