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ヒジリノ先生とこかこい

246 名前:222 Mail:sage 投稿日:2020/05/26(火) 23:58:44.24
【ヒジリノ先生とこかちゃ】
下北県朽木市
ふるたかに自転車を漕がせ、この熱帯夜に裏山までやってきたこかちゃ。
こ「帰りは勝手にするからふるたかはもう帰っていいよ」
そう言い残し奥へ進む。屋敷が見えてくる
ヒ「待ってたよこかこいさん」
そこに立っていたのは、
巷でそこそこ名前の売れている小説家、ヒジリノ先生だった
「「乾杯」」
こかちゃを連れ屋敷に入り、お酒を飲み交わすヒジリノ。
他愛もない話、趣味、セクハラを楽しむ。もっとも、こかちゃはほとんどスルーしたが。
ヒ「それにしてもこかこいさんの熱量、しりりを思い出すね」
こ「ヒジリノ兄貴に言っていただけると光栄です」
褒めても次作は早くならないぞ、とは言ったものの赤面する先生をみて微笑むこかちゃ。
こ「それで、今日はヒジリノ兄貴にお願いしたいことがあって」
ヒ「なんだい?私でよければなんでもしてあげるけれど」
こ「私…学園に人を呼び戻したいんです!」
ヒジリノは困惑すると同時に内心喜んだ。
週に一度れむちゃを拝むため不法侵入するほどの学園マニアである。
しかし年月が経つにつれ学園の活気は下がり、もう新規参入者も見込めないと言われている…
それを知っていたヒジリノは少し悩み
ヒ「なるほど…言いたいことは分かる。君や私たちの母校だからね…ヒック」
こ「学園に人を呼び込むには兄貴のような名前の知られた方が広告塔になって資金を集めなければならないんです」
説得の末、ヒジリノはコカパイスラを条件に学園再興に手を貸すことにしたのだった

ふ「なにやってんだあいつら…」


孤独死

73名無し戦隊ナノレンジャー!2020/08/16(日) 05:26:29.61
ここは福岡県直方市。古びたアパートの一室に、通報を受けた駐在所の警官が自転車で駆けつけた。
「あなたが、第一発見者ですね?」
男は隣室に住む中年だ。
「あぁ……普段は会話することなんてないんだが、夜中に隣から爆音がして叩き起こされてよ。その時は寝直したんだが、起きてから思い出して腹が立ってきたんで文句の一つでも言ってやろうと思ったんだ」
男が部屋の方を伏目がちに見つめる。
「今年に入ってからかな、いつも夜中から朝方まで一人で喋ったり騒がしくてずっと迷惑してたんだ。でも何回呼んでも反応もないし、ドアノブを回してみたら開いてたから腹いせに覗いてやったんだ。そしたら……」
まさか隣の部屋で死なれるなんて、と口にする前にいかにもお節介そうな管理人が口を挟む。
「ここの人は顔を合わせても挨拶しないし、コミュニケーションが上手くないみたいでねぇ……」
警官は二人の話を聞き流しながら、こういう現場ではよくある話だと話す先輩達を思い出していた。孤独死する人間は自分から他人を遠ざける傾向にあるという。
「しかし、酷い有様だな……」
部屋に入り辺りを見回した警官は思わず顔を歪めた。これは、遺体の臭いなどではない。
そもそも、死臭というのは夏場であっても2日程度は経たないと発生しないものである。椅子の横で息絶えた遺体も、一見すればまだ寝ているだけのようにも思える。
「幸か不幸か、まだすぐ見つけてもらっただけマシだな」
この臭いは、部屋中に散乱する酒瓶と床を埋め尽くすゴミ袋の山が発していた。風呂場を開けると、得体の知れない菌類まで生えている。人が暮らす場所ではない、少なくとも警官にはそう思えた。


74名無し戦隊ナノレンジャー!2020/08/16(日) 05:27:12.87»78
ふと、遺体の耳から伸びる白く細いコードが目についた。
「そうか、このイヤホンが抜けて隣人が気付いたんだな」
どうやらイヤホンはPCに繋がっていたらしい。暗い部屋で唯一光を放つモニターに目をやると、青い背景にどこかで見たことのあるような男の顔が映し出されていた。
「目力……先輩?」
導かれるように手がマウスへと伸びる。無論、これは警官としてあってはならないことだ。
だが、孤独死の現場は数多くても若い女というケースは稀である。田舎の駐在所で燻っていた好奇心には抗えず、警官は他のウィンドウに使い辛いカーソルを合わせていく。
「アヴィ……なんて読むんだ?これ」
開かれていたソフトには、無数の線と棒が並んでいた。画面上部には鎌を持った少女が映し出されている。
「はは、わけわかんねぇな……」
思っていたような収穫が得られず、警官は肩をすくめて笑った。我に返り、PCを元の状態に戻そうとマウスを触った手が止まる。
何故かモニターに映る少女は微笑んでいるようにも、悲しんでいるようにも見えた。
「……くだらない、そろそろ戻らなくては」
直に本署から応援が来る。警官はまたゴミ袋をかき分け、埃っぽい部屋を後にした。


椎茸のルポルタージュ

89名無し戦隊ナノレンジャー!2020/08/16(日) 09:25:10.66
女の人生は闇だった。
女はこれまでずっと嫌悪と嫉妬と虚無の中で生きてきた。
他人も勉強も娯楽もスポーツも何かにかこつけて否定してきた。
そんなある日、たまたま、インターネットで肥溜めコンテンツ、クッキー☆と出会った。
その瞬間、女に初めて「楽しい」という感情が生まれた。
真っ暗な闇に星☆明かりが灯ったのだ。
初めて生まれたその感情は女をこれまでになく強く突き動かした。
もっとクッキー☆を見ていたい。クッキー☆に関わりたい。
そんな思いでクッキー☆動画を視聴・投稿する日々。
しかし、時の流れはすべてを過去へと押しやる。
クッキー☆の原典が投稿され10年弱が経過した界隈は、今や明らかに勢いを失いつつあった。
女は焦った。
暗闇の人生の中で「唯一つだけ」見つけた明かりが、消えそうになっているのだから。
何もしないでそれを眺めている訳にはいかない。なんとかしてクッキー☆を再興しなければならない。
焦りはもはや衝動となり女をあらゆる行動へ駆り立てた。
想いの強さは誰よりもあった。しかし、全ての行動は裏目となった。
女のこれまで抱えてきた闇が深すぎたからだ。
深い闇は女の全ての想いを屈折させ、もはや誰にも理解しきれない何かとなって表現された。
常人の目には、女の行動は矛盾と狂気にしか映らなかった…


生放送のあとで

468名無し戦隊ナノレンジャー!2020/08/16(日) 23:36:29.85»476»479»492
最後の声を振り絞り、「死相姉貴ばんざーい」と配信を終えた狐仮虎威は力なく机に突っ伏した。
魂を失い硬直したあずきアイス藍丸が虚空を見つめる。
「どうして、こうなっちゃったんだろう……」
堪えていた涙が、一気に頬を伝って流れる。自暴自棄になって闇雲にマウスを動すと、使い辛そうなカーソルが画面を右往左往する。やがてその動きは止まり、一枚の画面がポップアップした。死相姉貴.pngだ。
「僕はただ……クッキー☆動画を、死相姉貴をもっとみんなに見てもらいたかっただけなのに」
モーツァルトの酒瓶に手が伸びる。だが、今夜はツマミのお菓子は無い。再び嗚咽が漏れる。
オレンジ色の髪色の少女に見つめられながら、狐仮虎威はチョコレートリキュールの中へと意識を沈めていった。